【歴史・施設】
西会津町で伝統的な製法を守り車麩を作り続けている田崎さんは、丸十製麩の3代目。先代が跡継ぎを探していたときに、サラリーマンをしていた田崎さんが周りの反対を押し切って弟子入りした。厳しい修行を経て、先代の引退とともに3代目となった。今でも先代から譲り受けた器械を大切に使い、西会津の伝統食である炭焼き車麩を夫婦で守り続けている。
【生産者情報】
《炭焼きの力で膨らませる伝統の技》
車麩を焼く日は、朝の3時過ぎから炭の用意をする。夏の作業場はすごい熱気だ。麩の材料はグルテンと強力粉のみ。器械で粉と水をまぜた後、さらに人の手でまぜあわせる。その後、練りの器械にかけ、練りあがったものを包丁でカット。それを伸ばしながら焼き上げの長い棒にリズミカルに巻きつけて行く。季節や天気によってもかわる生地の伸び具合。頼りになるのは手の感覚だけだ。職人ならではの技が光る。
巻きつけられた麩は、炭火の上でクルクルと回転しながら焼かれていく。膨張剤は使っていないので、炭焼きの力だけで膨らませていく。焼き具合をみながら、場所を次々と入れ替える。焼きあがった麩にまた生地を巻きつけ、再び焼いていく。焼きの作業は3回繰り返される。焼きたての麩を試食させてもらった。熱々で香ばしい、優しい味だ。
焼きあがった麩は、ほどよく乾いた状態でカット。その後、紐をかけ風通しの良いところで乾かす。水分が抜けきる完成まで2週間ほどかかる。手づくりのため大量生産はできないが、時間をかけてきちんと丁寧に作られた伝統の味だ。
【東北大震災の影響】
地震が起きた日は、麩を焼く作業中で、2回目の焼きが終了した直後のことだった。
壁に立てかけていた麩は全て倒れ、折れてしまった。また、燃料不足により県内の物流はストップ。3月の彼岸前は忙しいはずだったが、まったく配達できなかった。「3月、4月は本当に駄目でどうしようかと思った」と田崎さん。ゴールデンウィークのころになるとやっと観光客が動きだした。福島県産品ということでの返品などがなかったのが救いだという。今日も田崎さんは黙々と麩を焼き続ける。
【MAP】
投稿者: 素材広場|この記事へのリンク